『田内学 連載 ミライ中学 投資部!
第2話 「投資ってのこぎりでするの?」』

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アタマをきたえる
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#将来
2022.04.20
田内学 連載 「ミライ中学 投資部!」


投資部初日の放課後、悠木アカリは幼ななじみの梶優斗と久しぶりに一緒に帰った。二人が歩く桜並木は町一番の花見スポットだが、今はすっかり花が散って葉が茂り始めている。

「そういえば、優斗くんのお母さんって元気にしてる?」
優斗の横顔を見ながら、昔そろばんを教えてくれた彼のお母さんをアカリは思い出していた。
「相変わらずだよ。そろばん教室で忙しくしてる」
「ほんと人気だよね。うちのお母さんが、商売上手よねっていつも言ってるわよ」
「商売のことなんて全然考えてないよ。みんなが喜んでくれるのがうれしいんだってさ」
「そっか、みんなに喜んでもらうために教えてるんだね。優斗くんのお母さんはいつもていねいに教えてくれていたよね」
と言いながら、アカリちゃんは指を動かしている。そろばんの指使いを教えてくれたことを思い出していた。

アカリちゃんが家に帰ると、お母さんが目を輝かせて聞いてきた。
「ねえ、アカリ。学校の投資部行ってきたんでしょ。どうだった?」
「なんか、ノコギリで板を切ってた」
「えっ、どういうことよ。投資部なんでしょ?上がりそうな株を教えてくれるんじゃないの?」
「長谷川先生が、『投資は、将来の人の幸せを予想して働くことだ』って教えてくれたけど、正直よくわかんない」と首をかしげながら答えるアカリ。
「長谷川先生って、たしか変わった経歴の人よね。先生になる前は、アメリカの投資ファンドとかで働いた金融エリートだったとかよ」
「へえー、そうなんだ。たしかに見た目もかっこいい感じする」
「ところで、投資部って人気なの?友達できそう?」
「うん。一年生も全部で10人入るんだって。そろばん教室のとこの優斗くんもいたよ」
「そうなのね。何だか楽しそうね。投資のことを先生から勉強して、お母さんにも教えてね」
お母さんに言われたものの、板の切り方くらいしか教えられそうにないよ、と心のなかでアカリは思った。


その予感は的中した。次の日に投資部で教えられたのは、ノコギリの使いかただった。
「木を切るのはノコギリを押すときじゃなくて、引くときに力を入れるの」と教えてくれる長谷川先生。だけど、これがどうして、投資につながるのだろう。「投資部」と書いてなかったら、「大工部」だと思ってしまいそうだ。
「先生、私たちは何を作っているんですか?そろそろ教えてもらいますか」
アカリは思い切って聞いてみた。
「ごめんごめん。まだ話してなかったわね。私たちは今、スロープを作っているの」
「スロープって、車椅子とかが通る、あのスロープですか?」
「そうよ。スロープがあれば、段差があるところで困っている人を助けることができるわよね」
「先生、それが投資にどう関係があるんですか?」今度は優斗が質問する。
「そうね、いい機会だから、お金を"稼ぐ"ということの意味から考えましょうか」
そういうと、新入生全員を集めて、長谷川先生は講義を始めた。

先生は、黒板に"ビジネス"とだけ、白いチョークで書いた。途端に長谷川先生がキャスターというよりも金融エリートっぽく見えてくる。
「ビジネスでお金を儲けるために必要なことってなんだと思う?」
という先生の質問に、隣のクラスの学級委員をしている男の子が手をあげる。
「一生懸命働くことです」という答えに、先生は少し首をかしげながら、
「ほかに答え思いつく人いる?」と続けた。
アカリの頭に昨日の会話がよみがえり、思わず声が出た。
「みんなに喜んでもらうこと?」
先生は目を見開いて、アカリを見つめた。
「そう!大正解よ!」

そして、長谷川先生は、「お金は、ありがとうの気持ちだ」という話を始めた。

田内学 連載 「ミライ中学 投資部!」

お金をもらうとはどういうことだろう?
働いたらお金がもらえると思う人も多いかもしれない。だけど、ちょっと違う。逆に、どういうときにお金を払うのかを考えると、答は簡単だ。
たとえば、お店に行ったときに並んでいるさまざまな商品。どれもが、だれかが働くことで作られている。そのなかで、自分がお金を払って買おうと思うのは、自分がほしいと思うもの。
それを手に入れることで自分が幸せになるものだ。
みんなを幸せにしてくれる商品やサービスを提供してくれる人や会社にお金が流れる。
下の表は、世界の株式市場で価値が高い会社のランキングだ。
1位のAppleは、現代の私たちの生活に欠かせないスマホを作っているし、4位のアルファベットはGoogleの会社だ。7位のメタ社はインスタグラムやフェースブックなどのサービスを提供している。
1位 アップル
2位 マイクロソフト
3位 サウジアラムコ
4位 アルファベット
5位 アマゾン・ドット・コム
6位 テスラ
7位 メタ・プラットフォームズ

※2022年1月14日時点 フォースタートアップス発表「2022年世界時価総額ランキング」
お金は、「ありがとう」の気持ちを形にしたようなものだ。会社のために働いてお金をもらえるのも、その会社の提供するサービスや商品を喜んで使ってくれる人がいるからだ。その「ありがとう」の気持ちが、お金として支払われて、働いている人々に流れている。
お金をもらうことは、だれかの幸せのために働くことで、お金を払うのは自分の幸せのためにだれかに働いてもらうということなのだ。

「木製のスロープを作れば、段差に困っている人が喜んでくれるわよね。段差があって入りにくいお店に、ベビーカーや車いすで入りやすくなるでしょ」
先生の言うことはもっともだ。
「でも、」
さえぎるように、優斗が先生に質問をした。
「お金はどうやってもらうんですか?」
「べつに使用料を取らなくてもいいのよ。喜んでくれる人が多ければ投資は成功するの。そのうちわかるわよ」
と意味深な答えをする先生。
どうやら、そのときを待つしかなさそうだ。アカリはそう思いながら、ずっと引っかかっていることを聞いてみた。
「だけど、先生。投資ってことは、お金を使うわけですよね。スロープ作るにしてもお金が必要なわけですし。そのお金はどうやって集めてくるんですか?」
満面の笑みを浮かべて、先生が答える。
「すごくいい質問ね。今日、3年生がここにいないのは、そのためよ。悠木さんたち1年生も来週は一緒に行きましょうか」
「どこに行くんですか?」と首を傾げながら聞くアカリちゃん。
「調達しに行くのよ」
「調達って、お金のことですか?『資金調達』に行くってことですか?」
投資部らしい言葉の響きに、アカリちゃんはワクワクが隠せない。
「さあ、それは来週のお楽しみね」
先生は、含み笑いをしただけで、それ以上は教えてくれなかった。

マンガ イラスト©髙堀健太/コルク


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著者紹介 田内学
書籍「お金のむこうに人がいる」(ダイヤモンド社)著者
国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。
2003年に東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
以後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に金利トレーダーとして16年間勤務。
日銀による金利指標改革にも携わる。

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