『いい匂いになりたい』
昼休み、図書室でハルカを見かけると、自然と足がそちらへ向いた。
彼女は、棚に並んだ古い本の背表紙を見つめていた。
「また、図書室か?」
ボクが声をかけると、彼女は振り返り微笑んだ。
「うん。静かで落ち着くから」
ボクはふと本棚の匂いを嗅いでしまう。
埃と紙が混ざった、独特の香りが鼻をくすぐる。
彼女とこの図書室を思い出すたびに、この匂いがついて回る気がして、ちょっと不思議な気分になる。
「匂いと記憶って脳のなかでとても密接な関係なんだってさ」
「え?」
「匂いを感じる嗅球っていう部位は脳のなかで記憶や感情に関わる海馬や扁桃体と直結しているんだって。だから、匂いを嗅ぐと昔の出来事や気持ちをふと思い出すことが多いんだ。その逆もあるんだって」
「へええ、じゃあ、アタルはワタシを見るとどんな匂いを思い出すの?」
「えっ...古い本の匂いかな、たぶん」
ボクは少し照れながら答えた。
彼女の姿を初めて見かけたのも図書室だったから。その印象が強く残っているんだ。
「ワタシはね、アタルを見ると」
ボクは一瞬でハルカと過ごしたいくつもの場面を思い出した。
彼女の脳の中でボクはどんな匂いなんだろう?
「牛乳を雑巾で拭いた後の匂いを思い出すかな」
「...え?」
「牛乳を雑巾で拭いた後の匂いよ」
「2回言わなくてもいいよ...」
「聞き返したからじゃない。ほら、小学校の頃さ、アタル、よく牛乳こぼしてたじゃない?」
いい匂いになりたい。いや、いい匂いになる!
ボクはそう心に決めたんだ。
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修学旅行を計画しよう!
中2のみんなは、いよいよ来年修学旅行だね。
学校でも修学旅行の実行委員が立ち上がったところかもしれないな。
中学校の修学旅行は、一生の思い出になるイベント。
そして、その裏側でがんばっているのが実行委員なんだ。
修学旅行が成功するためには、実行委員がしっかり準備を進める必要がある。
今回は、実行委員がどんなことをしているのかを紹介するよ。
合唱コン直前対策!
いよいよ迫ってきた「合唱コンクール」!
ARE YOU READY? 準備はOKかい?
練習が嫌だったキミも、絶対に勝ちたいキミも、残すは本番だけ。
キミのみなぎる情熱を歌にこめてぶっつけようぜ!