『インソムニア 眠れない夜は』

「最近な、授業中眠くって・・・」
あくびをかみ殺しながら、ケイスケが言った。
「不眠症ってインソムニアっていうんだぜ」
あくびが伝染したのか、ダイチも口に手を当てた。
「いや、そうじゃねえんだ、考え事をしてるとさ、眠れなくなっちゃうんだよ」
「へえ、将来とかテストの成績とか? おまえ、そんなこと気にするんだ」
「いや、気にしてねえよ」
「気にしろよ、この前のテスト、ひどかったんだろ」
ケイスケはまるで動じず、教室の窓の外を見つめて言った。
「たとえば、地下鉄ってよ、線路は全部閉じてるじゃん?」
「ああ?」
「そこにどうやって車両を入れてんのか、とかさー、考え始めると眠れない」
「...あのな、ケイスケ」
「ダイチは不思議に思わねえか? あんなおっきなものがだよ、入る穴なんてどこにも空いてないじゃん」
「あのな、ケイスケ、それは漫才のネタだよ」
「え? おんなじこと考えてた人が他にもいるんだ! ひょっとすると、これは世界の七不思議の一つなのかもしんねえな」
「...」
「今夜も眠れそうにないよ」
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