ナオはこぶしをぎゅっと握りしめた。
いつもなら、もう泣いてしまうところだ。
気持ちがたかぶると泣いてしまうのだ。

けれど、今日はだめ。
ぐっと涙をこらえた。
「ナオ、またそんなこと言って！」
ユリが声を荒げた。
「だからみんなに誤解されるんだよ！」

ナオの目に涙が浮かんだが、息を飲み込んで、言葉を探した。
泣いたって自分の考えは伝わらない。
自分の考えが伝わらなければ、ユリだって離れていってしまうかもしれない。
泣いたってなにも変わらないんだ。

だったら泣くもんか！

「違うの、ユリ」
ナオは震える声で続けた。
「私は...私はただ、もっと分かってほしいの。私だって、自分の気持ちをちゃんと伝えたいんだよ」

ユリは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情に変わった。
「ナオ...そんなふうに言うの、初めてだね」

ナオは小さくうなずいた。
泣かなかった。ちゃんと自分の言葉を口にできた。
それだけで、少しだけ強くなれた気がした。

ユリは深く息を吐いた。「分かった、話そう」