日本の印刷業は江戸時代の浮世絵（うきよえ）の木版画作りにさかのぼり、明治以降、印刷会社として現在に近いお仕事になります。 著者や出版社から原稿（げんこう）を受け取る→紙面に仕立てる→本として大量生産する… これが印刷会社の基本的な仕事の流れです。
かつてはこのような本や雑誌の印刷が中心でしたが、世の中の変化に伴って、印刷会社の仕事の範囲（はんい）も変わってきています。 デジタル技術を取り入れながら、印刷する対象を、紙だけでなく布やフィルム、金属、ガラスなどさまざまな素材へ広げてきました。
また、本の印刷を通してつちかった、非常に細かい加工をする技術や、インクをムラなく薄（うす）く塗（ぬ）る技術などを、いろいろな製品づくりに応用してきました。 これにより、本や雑誌だけではなく、例えば、テレビ、スマートフォン、洋服、家具、食品の箱や袋（ふくろ）など、わたしたちの身の周りのさまざまな製品にたずさわるようになっています。 もちろん、すべての印刷会社があらゆる印刷物を扱（あつか）っているわけではありません。 印刷会社には、中小零細（れいさい）企業も多く存在しており、そのような企業では一般消費者が安価に注文できる「ネットプリント」を主たる事業としているところもあります。

印刷会社はさまざまな製品を扱っています。 それぞれが担当する製品や役割で働き方が異なります。 日々の仕事は営業、企画、開発、製造の各部署が連携（れんけい）して進められています。

・営業担当者

お客様となる企業（得意先と呼びます）と自社の企画メンバーや開発、製造部門をつなぐ仕事です。本や雑誌が担当であれば出版社へ、食品の箱や袋が担当であれば食品メーカーへ、というように自分が担当する製品と関連のある会社とやりとりをします。 得意先とコミュニケーションをとって、より良い関係をつくることが大切です。

・企画担当者

営業担当者が得意先から聞いてきた課題や要望に対して、どのように解決すれば良いかのアイディアを考え、提案する仕事です。 より良いアイディアをたくさん思いつく人が活躍します。

・開発担当者

印刷技術を核（かく）として、既存（きそん）の製品・サービスを改良したり、新しい技術を開発したりする仕事です。専門の知識と、より良いものを生み出すための粘（ねば）り強さが必要です。

・製造担当者

工場で実際にものをつくる工程を管理する仕事です。ミスのないようにていねいに仕事をすることが求められます。 印刷も業界ごとに対応している場合が多いようです。

・出版印刷

出版社や新聞社などが発行する本や雑誌などの商業出版物をつくる。

・商業印刷

チラシやパンフレットなど事業活動に使われる印刷物をつくる。

・事務用印刷

名刺・封筒・ノート・手帳などの事務用品をつくる。

・証券印刷

商品券やチケット・カード類など、金銭や信用に係わる証書やカードをつくる。 など。

おもしろい小説やマンガの原稿があったとして、読んで楽しむだけでなく、本の形になる過程にたずさわることにも喜びを感じるような好奇心旺盛（おうせい）さが必要です。
また、本の内容だけでなく本の体裁（ていさい）、たとえば紙の種類や書体や写真の美しさなどにも気を配り、時間や費用の制約がある中でもよりよいものにする努力をおしまないような、性格的にモノ作りが好きな人にも向いています。
そして、未来を見すえて「こんなものができたらいいな」という豊富なアイデアをもち、それを実現するためにチャレンジし続けられる人にも向いています。

ITの進歩で業界そのものが縮小傾向（けいこう）であり、印刷会社を取り巻く環境（かんきょう）が厳しいことは事実です。 しかし、大手の印刷会社を中心に半導体や太陽光電池部材など、これまでの印刷のノウハウを応用して新しいビジネスに手を広げる企業が増えています。 印刷技術を応用して、これまでにない新しい製品やサービスを生み出していくことが今後のカギになるでしょう。
本や雑誌などの印刷の基本の流れは、①企画する→②原稿をつくる→③印刷用の版（ハンコ）をつくる→④インクを塗る→⑤形を整える　の順番で進んでいきます。 この各工程でつちかった技術は、いろいろな分野へ応用ができる広がりのある技術です。 印刷会社は、これからもわたしたちの生活をより良くしていく新しい製品やサービスを生み出していく可能性を秘めています。