農業コンサルタント

農業コンサルタントの仕事内容は?

農業コンサルタントになるには?


農業コンサルタントは農業ビジネスの経営者に、アドバイスを行う専門家


農業の新しい動き


近年の日本では、農業を「ビジネス」として「経営」していく人が増えています。 農業を仕事に選ぶ若い人が増えたり、農業の6次産業化が進んだり、農業のI T化やロボットの導入が進んだり、農業を取り巻く環境は大きく変化し始めています。 また一般企業の農業ビジネスへの参入や、海外展開で事業拡大をめざす農家・農業法人も増えています。

・農業の6次産業化とは?


農業の6次産業化とはなんでしょうか?
近年、農家の人が経営する「農家レストラン」「農家カフェ」「体験農園」「農家民宿」などが注目を集めています。
これらは農業の6次産業化の一つで、農家や農業法人の所得の拡大、雇用の拡大、地域の活性化に役立っています。

「6次産業化」とは農作物を生産する(1次産業)だけでなく、その農作物を加工(2次産業)して、流通・販売(3次産業)にまで生産者がかかわり、その新しい付加価値を生産者が獲得できる仕組みです。

6次産業の「6」は、1次、2次、3次の数字をかけ合わせたもので、農業に加工業や商業をかけ合わせて、世の中に新しい価値の産業を生み出そうという意味です。

1次産業×2次産業×3次産業=6次産業
(農業) (工業) (商業) (新たな価値を生み出す)

実はこれまでも農家が自分でつくった作物を加工してジャムにしたり漬物にしたりして売るということは行われていました。これも6次産業の一つです。ただ近年は、それだけではなく農村カフェやレストラン、農家民宿、農業体験ツーリズムビジネスなどをめざす農家も増えてきました。そして家族経営から組織経営となって、法人化する農家も増えています。

・農業コンサルタントとは?


農家や農業法人は生産のプロであっても、経営やビジネスのプロではありません。
「うちも6次産業化したい」と思っても、どこから始めたらいいのか? どうすれば魅力的な商品に加工できるのか? 販売ルートはどうすればいいのか? 農業レストランはどうやったら始められるのか? お客さんは果たして来るのか? そのようなことはその道のプロに聞かなければわかりません。
また「社員を雇って大規模化したい」と思っても、農業を気候に左右されない安定したビジネスとして経営するにはどんな機械やシステムを導入すればいいのか? これから農業を始める人材をどう育てればいいのか? 政府からの助成金はどうすれば獲得できるのか? 海外市場に農産物を輸出するにはどうすればいいのか? なども専門家に相談しないとわからないのが普通でしょう。

農業コンサルタントは、このように農業をビジネスとして発展させたいと思う経営者に、経営やビジネスのアドバイスとサポートを行う専門家です。

・農業コンサルタントにはさまざまな専門分野を持つ人が働く


農業コンサルタントにもさまざまな得意分野、専門分野を持つ人がいます。
財政面からのサポートを専門にする人もいれば、新しい農業技術面やシステム導入の専門家もいます。農家レストランのメニュー開発を中心にアドバイスする専門家もいます。
経営者は自分の課題に応じてコンサルタントに相談するのが普通ですが、農業コンサルタントの具体的仕事の領域は以下の3つにまとめられます。

農業ビジネスの経営サポート


農業経営をビジネスの観点からアドバイスし、実現するためのサポートまで行います。
地域や農家によってサポート内容は多様ですが、主に経営プランを立てるサポートから、それを実現するための人材の確保、新しい生産技術の導入、生産管理や経理のためのパソコンの導入や財政面での制度の説明、指導なども行います。

6次産業化サポート


農産物の魅力的な商品化、ブランド化、農業カフェ経営など、6次産業化をめざす農家や農業法人のサポートをします。
6次産業化には多くの投資が必要になるので、ビジネスとして成り立つのかを十分に検討しながら、事業開始までの流れをつくり、生産物の価値を高め、多くの利益を得るためのサポートを行います。

人材育成サポート


農業界では法人化や規模拡大、経営の多角化が進んで、多くの従業員を抱える農業法人も増えています。
そのような組織に対して、リーダーの育成や農業の新人教育など、人材育成面から研修や勉強会を行ってサポートしています。
農業コンサルタントはどんな働き方をするの?

農業コンサルタントは農業専門のコンサルタント会社で働く


農業コンサルタントの就職先は、農業専門のコンサルタント会社がメインです。
そのほか、税理士法人や会計事務所で活躍して、主に財政面のアドバイスやサポートを行う人もいますし、農業資材メーカーに所属して、資材の効果的な導入についてアドバイスを行うコンサルタントもいます。

また「コンサルタント」ではなく「6次産業化プランナー」「農業経営アドバイザー」などの肩書を持って活躍している人もいます。
これらの人たちは就職先の会社や事務所で一般の会社員と同じように、会社の規定に沿って働いています。

農業とほかのジャンルの専門分野を持って、フリーランスやフリーランスのチームで活動しているコンサルタントもいます。
農業コンサルタントはどんな人に向いているの?

農業コンサルタントはコミュニケーション力や人間的な魅力がある人に向く


・農業コンサルタントに必要な基本の資質とは?


農業コンサルタントに限らずコンサルタントに求められる資質としては、コミュニケーション力や人間的な魅力、相手の期待にこたえようとする責任感が必要です。

そして農業コンサルタントには前提として農業が好きで農業に関する知識や経験があること、そしてその地域の活性化に強い興味のある人が向いています。
特に農業ビジネスは、ほかの企業や自治体、地域との人たちの連携が非常に重要になる場合も多いので、特に人とつながっていく人間力は大切です。

・農業コンサルタントに求められる知識・スキルとは?


農家に経営アドバイスをするための知識・スキルは、専門分野に分かれます。
1人がすべての知識やスキルを持つ必要はなく、チームで専門分野を生かし合って活躍していくことが多いです。現在多く活躍している人の持っている専門スキルや知識を紹介します。

・税務や労務、マーケティングの専門知識
農家や農業法人の経営には税務関係の知識や、人を雇用する際の知識、売れるものを生産して商品化していくマーケティングの知識が欠かせません。
税理士、公認会計士、中小企業診断士などの資格を持っている人、金融機関の職員の経験者は、税務や労務、マーケティングの知識を生かし、主に財政面や経営面からのアドバイスを行って農業をサポートしています。

・ロボット技術やAI、IoT(もののインターネット)などの先端技術の知識
ロボット技術やAI、IoTなどの先端技術の知識を活用した「スマート農業」が今後増えていくことが期待されています。ロボット技術やAI、IoTに強い人も農業コンサルタント業界に求められています。

・フードコーディネーター
農産物を魅力的な新しいメニューに変えたり、商品化したりするためのアドバイスを行える人材も求められています。

・食品衛生監視員
農作物の商品化にあたって、食品の衛生面の管理、指導のできる人材も求められています。

・語学力や貿易の知識
今後さらに海外へ市場を広げていく農家や農業法人も増えています。高い語学力や貿易の知識を持つコンサルタントも求められています。

ほかにも流通のプロや、商品企画のプロ、デザインのプロ、販促のプロ、旅行業のプロなど多様な専門知識を持つ人たちが、これからの農業では求められ、コンサルティングチームの一員となって新しい価値を生み出していく可能性があります。
農業コンサルタントの将来展望は?

農業コンサルタントの将来展望 多様な分野のコンサルタントが求められる


農業の発展は、日本の地域の活性化の大変重要なカギとなります。
農業コンサルタントは、農家や農業法人のサポーターであると同時に、地域活性化のサポーターでもあります。
農業コンサルタントは、今後の日本の農業や地域の発展を支える重要な役割の仕事と言えるでしょう。
消費者のニーズを常にとらえ、地域の特性を生かした農業ビジネスを考えていける多様な専門分野の農業コンサルタントが、今後もますます求められていくでしょう。
農業コンサルタントにはこうすればなれる!

認定資格が取れるコースを設ける高校や専門学校、大学・大学院もある


・農業コンサルタントになる一般ルートは?


農業コンサルタントになるには必須の資格や決まったルートはありません。
農業や農業ビジネスについての知識や経験があることは必要なので、大学や大学院で農業や農業ビジネス、地域創生学などを学んだあと、農業専門のコンサルタント会社などに就職する方法が1つあります。

今は、東京農業大学、東北大学などのように「食の6次産業化プロデューサー(食Pro.)」の認定資格が取れるコースを設ける高校や専門学校、大学・大学院があるので、地域の農業の6次産業化に興味のある人は調べてみてください。

一方、大学の経済学部や商学部、経営学部、法学部などを経て「税理士」や「公認会計士」の資格を取得するか、金融業界に就職しながら、「農業経営アドバイザー」資格を取得して、財政面から専門的なアドバイスを行う道もあります。

ほかにもフードコーディネーターや食品衛生監視員など「食」にまつわるプロフェッショナルとして、農業コンサルタントチームにかかわって働くルートなども考えられます。

・農業コンサルタントに役立つ資格


農業コンサルタントに必須の資格はありませんが、今注目されている農業ビジネスに関する資格を2つ紹介します。

「食の6次産業化プロデューサー(食Pro.)」


国家戦略・プロフェッショナル検定の一つで、一般社団法人食農共創プロデューサーズが行う、「食の6次産業化」を担う人材の認定や育成を目的にしている資格です。
農林水産物を加工した商品開発、消費者への直接販売、レストランの展開など、食の分野で新たなビジネスをつくり出す職能レベルを認定する資格です。
レベルは1〜6まであります。レベル4以上では、プロのコンサルタントとして活躍できる目安です。

「農業経営アドバイザー」資格


「農業経営アドバイザー」とは、農業経営者に対し、経営改善サポートができる人材育成を目的とした制度で、「日本政策金融公庫」が認定しています。

受験資格は、税理士、公認会計士、中小企業診断士などの有資格者と、金融機関職員、農協などの関係機関・団体職員などです。

資格を取得するには、計5日間の研修と試験を受けます。最初の4日間で研修を受講し、最終日の試験で合格する必要があります。
資格取得によって、税務や労務、流通などの経営に必要な知識、農業生産に関する理解など農業経営に関するアドバイスを行うノウハウを持ち合わせていることを証明できます。