『田内学 連載 ミライ中学 投資部!
第12話 最終回「さよなら こんにちは」』
三月。投資部の今年度の活動最終日に重大発表があった。
その少し前、職員室でアカリは長谷川先生と話をしていた。
「先生が、私たちの成長に投資しているって言ってくれたじゃないですか」
「そうね。そんな話したわね」
「あのとき、私、気づいたんです。私にとってのだいじなのは、自分の未来に投資することなんだなって。だから、自分の夢を見つけて、それに向かってがんばらなきゃと思うようになったんです」
「そう言ってもらえると、私もすごく嬉(うれ)しいわよ。投資部を始めた甲斐(かい)があったわね。優斗くんのお母さんの想いを私が受け取って、それをアカリさんが受け取ってくれたのね」
長谷川先生が言い終えると、ちょうどチャイムが鳴った。
「もう、部活が始まるわね。アカリさん、続きはまたあとで話しましょう」
長谷川先生は投資部の扉(とびら)をあけて一声かけた。
「はーい。座って」
騒がしくしていた部員たちはみんな着席する。中央にある作業台には電子工作の部品やはんだこてなどが散らかったままだった。
先生はホワイトボードの前にたつとすぐに話し始めた。
「聞いている人もいるかもしれないけど、私がこの部屋で話すのは今日が最後です。ミライ中学を退職して、来月からは別の中学校に移ります」
部員たちはざわついた。
「聞いてないですよ」
「えー、先生がいなくなるなんてショックです」
「先生がいないと今のプロジェクトすすみませんよ」
どれも先生の退職をさびしがる声だった。
「みんな心配しなくてだいじょうぶよ。私の後任の顧問(こもん)の先生はちゃんと決まっているから。実は、今日来てもらっているの。ちょっと、入って来て」
前の扉から入って来たのは、後ろで髪をたばねた若い女性だった。
「どうも、はじめまして」
新任の先生は頭をぺこりと下げた。
「彼女はね。みんなの先輩でもあるのよ。ここの投資部の卒業生なの。ちょっと自己紹介してよ」
「はい。みなさん、よろしくお願いします。私も、昔ここで長谷川先生にいろいろ教えてもらいました。だいじなのは、私たちの未来について考えていくことだと思っています。それは、未来の社会のことでもありますし、未来の自分についてでもあります。私自身も教師という夢に向かって、自分に投資して来ました。お金を投資したのではなく、時間を投資したという意味です。その夢をかなえて、今ここに立っています。4月からどうぞよろしくお願いします」
「実はね、彼女は結婚したばかりなんだけど、旦那(だんな)さんも投資部の出身なのよね」
長谷川先生の暴露(ばくろ)に、部員たちから黄色い歓声があがる。
新任の先生は顔を赤らめた。
「長谷川先生、ちょっとやめてくださいよ」
「ごめんごめん。じゃあ、みんな、新しい先生になにか聞きたいことない?」
一番前の学生がまっさきにたずねた。
「先生、名前教えてくださいよ」
「あ、ごめんなさい。緊張してすっかり忘れていました」
彼女はホワイトボードに向かうと、大きく名前を書いた。
「私の名前は、梶アカリ、です」
その少し前、職員室でアカリは長谷川先生と話をしていた。
「先生が、私たちの成長に投資しているって言ってくれたじゃないですか」
「そうね。そんな話したわね」
「あのとき、私、気づいたんです。私にとってのだいじなのは、自分の未来に投資することなんだなって。だから、自分の夢を見つけて、それに向かってがんばらなきゃと思うようになったんです」
「そう言ってもらえると、私もすごく嬉(うれ)しいわよ。投資部を始めた甲斐(かい)があったわね。優斗くんのお母さんの想いを私が受け取って、それをアカリさんが受け取ってくれたのね」
長谷川先生が言い終えると、ちょうどチャイムが鳴った。
「もう、部活が始まるわね。アカリさん、続きはまたあとで話しましょう」
長谷川先生は投資部の扉(とびら)をあけて一声かけた。
「はーい。座って」
騒がしくしていた部員たちはみんな着席する。中央にある作業台には電子工作の部品やはんだこてなどが散らかったままだった。
先生はホワイトボードの前にたつとすぐに話し始めた。
「聞いている人もいるかもしれないけど、私がこの部屋で話すのは今日が最後です。ミライ中学を退職して、来月からは別の中学校に移ります」
部員たちはざわついた。
「聞いてないですよ」
「えー、先生がいなくなるなんてショックです」
「先生がいないと今のプロジェクトすすみませんよ」
どれも先生の退職をさびしがる声だった。
「みんな心配しなくてだいじょうぶよ。私の後任の顧問(こもん)の先生はちゃんと決まっているから。実は、今日来てもらっているの。ちょっと、入って来て」
前の扉から入って来たのは、後ろで髪をたばねた若い女性だった。
「どうも、はじめまして」
新任の先生は頭をぺこりと下げた。
「彼女はね。みんなの先輩でもあるのよ。ここの投資部の卒業生なの。ちょっと自己紹介してよ」
「はい。みなさん、よろしくお願いします。私も、昔ここで長谷川先生にいろいろ教えてもらいました。だいじなのは、私たちの未来について考えていくことだと思っています。それは、未来の社会のことでもありますし、未来の自分についてでもあります。私自身も教師という夢に向かって、自分に投資して来ました。お金を投資したのではなく、時間を投資したという意味です。その夢をかなえて、今ここに立っています。4月からどうぞよろしくお願いします」
「実はね、彼女は結婚したばかりなんだけど、旦那(だんな)さんも投資部の出身なのよね」
長谷川先生の暴露(ばくろ)に、部員たちから黄色い歓声があがる。
新任の先生は顔を赤らめた。
「長谷川先生、ちょっとやめてくださいよ」
「ごめんごめん。じゃあ、みんな、新しい先生になにか聞きたいことない?」
一番前の学生がまっさきにたずねた。
「先生、名前教えてくださいよ」
「あ、ごめんなさい。緊張してすっかり忘れていました」
彼女はホワイトボードに向かうと、大きく名前を書いた。
「私の名前は、梶アカリ、です」
マンガ イラスト©髙堀健太/コルク
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著者紹介 田内学
書籍「お金のむこうに人がいる」(ダイヤモンド社)著者
国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。
2003年に東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
以後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に金利トレーダーとして16年間勤務。
日銀による金利指標改革にも携わる。
書籍「お金のむこうに人がいる」(ダイヤモンド社)著者
国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。
2003年に東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
以後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に金利トレーダーとして16年間勤務。
日銀による金利指標改革にも携わる。
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